『アートNPOデータバンク 2014-2015』
(特集:アートNPOによるアーティスト・イン・レジデンス事業の実態調査)


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『記憶の風景、なつかしい未来へ──アーティストと巡る、陸前高田、そして東北』


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『アーカスプロジェクト20周年記念事業──アートと地域を考えるシンポジウム報告書』


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『MICRORESIDENCE! 2013/2014: Artist in Residence (AIR)を考える』


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AIRと私 06:陸前高田──探訪と発見


コーネリア・コンラッヅ(アーティスト)

「要するに、景色とは外なる自分と内なる自分のつながりである」
(“In short, landscape is the link between our outer and inner selves.”)
ビル・ビオラ著『空っぽの部屋を叩く理由』(Reasons for Knocking at an Empty House)P253

「私の場所」に出会う方法

情熱の旅人として、そしてサイト・スペシフィック彫刻家として、これまでに世界中の国々に滞在し活動する機会がありました。多くの場合(そうすることが好きなのですが)、前もって計画を立てず旅に出ます。旅先に着いていつも最初にすること、それは「歩く」ことです。作品のための場所(サイト)やフォルムを求めて見知らぬ土地をあてもなく歩き、道端に転がるものを拾い集めるのです。それは、形や素材であったり、その土地の習慣や出来事であったりします。
私の作品は例外なく、それを創る場所と深く結びついています。場所を背景として見るのではなく、テクスチャとしてとらえているのです。「自分の作品がこのテクスチャの一部になること」を目指しています。

『ジャルダン・アン・ムーヴマン』

『ジャルダン・アン・ムーヴマン(動く庭園)』
4 x 4 x 1.2m。材質:石、セメント、鉄。曲がったコルクガシ周囲に設置。
ドメーヌ・デュ・レイヨール – ジャルダン・デ・メディテラネ、レイヨール・カナデル・シュル・メール(フランス)2014

それゆえ私は、その場所特有の「匂い」と「音」、そして「ストーリー」と「メモリー」を追い求めているのです。その一方では、歩くことでその場所と密な対話ができるとわかっています。その場所を取り巻く景色や建築、植物、歴史に思いを巡らせるのです。「歩いてゆけば『私の場所』、つまり『思考とインプレッションのすべてが凝縮され、それがイメージやアイデア、プロジェクトとなるスポット』にいずれ出会える」という現実に任せておいていいのです。
アーティスト・イン・レジデンスや委託作品の制作、展覧会などを通して経験してきたように、この「探訪」と「発見」のプロセスは、いずれの場合もエキサイティングでスペシャルなものだということは言うまでもありません。にもかかわらず、ここ最近のプロジェクトでは、時折、意に反して「マンネリ」のようなものを感じることがありました。

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AIRと私 05:スケールの活動──日本へのアーティスティック・フィールド・トリップの報告


アナ・プタック(キュレーター、アート・プロデューサー)

AIRプログラムのキュレーター

私の通常の仕事はレジデンシーを企画運営することである。ここ数年は、ワルシャワに数カ月間滞在することを決めたアーティストたちのサポートに携わっている。アーティストが滞在を決断する理由は、一般的に以下の三つの動機のうちのひとつだろう。第一に、アーティストのなかには特定の芸術活動に取り組むためにA-I-Rラボラトリーのプログラムへの参加招待を希望している人たちがいる。彼らは作品制作にあたり自分のコンセプトの実現を支援してくれる機関を探しており、そうした彼らの希望に沿うのがA-I-Rのプログラムなのだ。第二に、芸術研究を目的とするアーティストもいる。彼らの研究からは新たな成果が生まれるかもしれない。しかし、私たちのプログラムが基本的に前提としているのは、この「かもしれない」がまさに「かもしれない」という可能性であって、「そうでなければならない」という強制ではない。こうした研究では、ワルシャワで確認された社会現象、ワルシャワの歴史、ワルシャワを構成しているユニークな関係の集積、さらにはワルシャワの建築、経済、政治的な構成が分析され、マッピングされる。ワルシャワのアーカイブが貸し出され、テーマを絞った話し合いが住民や機関を相手に行なわれる。第三に、自分の時間を取り戻すためにA-I-Rラボラトリーにやってくる人々もいる。日常的な責任というプレッシャーから逃れ、創造的な実験を行ないたいという希望を抱いてやってくるのである。
私たちA-I-Rラボラトリーのキュレーターは、アーティストが抱く疑問や期待と、ワルシャワという都市そのもの、およびワルシャワ在住の専門家に関して私たちが持っている情報がもたらす可能性とのあいだを仲介する役割を担っている。ワルシャワ在住の専門家とは、研究者やワルシャワでの日々の生活や仕事を通して培われた知識を持つ人々のことである。つまるところアーティストは知識を探し伝えるプロセスを脚色し美化し、それらを芸術的解釈にゆだねる。ギャラリー以外での展覧会やイベントといったかたちで開催される頻度が高まりつつあるこの概念的な芸術活動の要素も、ワルシャワのA-I-Rラボラトリーがサポートする芸術的、学芸的ワークの重要な特徴となっている。

左=A-I-Rラボラトリーでのレジデンス風景。ウジャドゥスキー城現代美術センターのスタッフがセンターの前で種まきをしている。アーティストのキッチンガーデンをつくることがプロジェクトの一部分となっている。ジュリエット・デルベンサルとパヴェル・クラックによる作品《私たちは庭のようだ》(2012)
右=アーティストたちがモバイル彫刻の水陸両用車に乗船してヴィスワ川を下る試み(この試みは成功した)。2012年にA-I-Rラボラトリーに滞在したフランシス・ソーバーンの作品
ともに撮影=マグダレナ・スタロヴェイスカ

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アーティスト・イン・レジデンスの現在 16
経験という貢献──「なぜレジデンスするのか?」(レズ・アルティス総会2012東京大会レビュー[3])


津田道子(美術作家/博士[映像メディア学])

これまでに経験してきたアーティスト・イン・レジデンス(以下AIR)を振り返ることがある。
アーティストは部外者としての保証があってその土地を訪れる、エイリアンみたいなものである。
さまざまな土地を経験して、土地にまつわる気づきや驚きのセンサーが体の中に培われていると感じることがある。そのセンサーを働かせて、滞在する地域にあるものとそれらの関係や歴史に言及して展開する作品は、制作活動自体が成果のひとつといえる。直接それらに言及しなくても、その土地で制作を展開することは、必ずなんらかの関係を築く。
アーティストは地域にある豊かさを掘り起こし、光をあてる存在なのか。
それなら、アーティストがさまざまな土地を経験することを、貢献といえるのではないか。

このレヴューでは、今回のレズ・アルティス総会を振り返り抽出したタームからAIRによる経験の性質の違いを見つめ、「なぜレジデンスするのか?」という問いを自身の経験から検証してみる。

AIR自体に目的がある/ない

10月27日の今総会「セッション9:アーティストの理想のレジデンス」★1で、韓国出身のヨンヘ・チャンと米国出身のマーク・ヴォージュによるアート・ユニット「チャン・ヨンヘ重工業」が発した「なぜレジデンスするのか?」という率直な問いが、セッションをより緊張感のあるアーティスト・トークにした。それに加えて、会場からの「レジデンスはアーティストへのサポートになっているのか?」という質問は「アーティストとはなにか」「アートとはなにか」という根源的な議論を呼んだ。「AIRの意義はアーティストが新しい土地を知り、豊かな時間を過ごすことが根底にある」という彼らの発言に、それぞれの作家も思い当たる節があるようだった。
プロジェクトベースで活動するタイ人アーティストのウィット・ピムカンチャナポンは、アーティストとしての活動が軌道に乗ると、AIRをするチャンスは必然的に発生してくるものだと語った。そのうえで、「アーティストだけでなく家族へのサポートと健全な環境」が理想だと示したことに、どのアーティストも賛成していた。

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アーティスト・イン・レジデンスの現在 15
社会的流動性の指標としてのAIR(レズ・アルティス総会2012東京大会レビュー[2])


光岡寿郎(東京経済大学専任講師)

今回は、アーティスト・イン・レジデンス(以降AIR)の国際会議である「レズ・アルティス」を素材に、AIRが位置するもうひとつの社会的文脈について考えてみたい。前半では僕が参加したセッションの内容を紹介し、そのうえで後半では「社会的流動性」という観点からAIRの可能性を検討する★1

事業評価の難しさ

28日夕方のセッション「セッション14:創造基盤における文化政策」では、三名の登壇者が招かれていた。一人目が、世界各国の芸術振興機関を結ぶIFACCA(International Federation of Arts Councils and Culture Agencies)の事務局長であるサラ・ガードナー氏。二人目が、アジア−ヨーロッパ間の文化交流の促進に寄与するASEF(Asia-Europe Foundation)文化交流部門副ディレクター代理のアヌパマ・シュカール氏。そして最後に、文化庁長官官房国際課国際文化交流室長の中野潤也氏である。限られた時間のなかで、登壇者からはそれぞれ15分の発表がなされた。
最初にガードナー氏からは、IFACCAの概要と、同組織が実施してきた調査に関する発表がなされた。IFACCAは、各国のアーツ・カウンシルに代表される芸術振興機関のグローバルなネットワーク形成を目的に2000年12月に発足した組織である。現在72の国家的機関、及び47のそれに準ずる機関によって構成されている。そのうえで、IFACCAの主要な活動のひとつである、「WorldCP Project」へと言及していた★2。基本的には、各国の文化政策を詳細にドキュメンテーションし、共通の情報基盤として利用するプロジェクトだ。すでにヨーロッパの42カ国を網羅し、現在、韓国やシンガポールといったアジア各国の文化政策のプロファイリングを実施しているとのこと。その後、IFACCAの調査の詳細が手短に紹介されていたが、これは後述のシュカール氏の発表とも共通して、細かな内容について本稿で繰り返すことにあまり意味はないだろう。というのも、IFACCA、ASEFともに、調査結果を自身のサイトで公開しているからで、詳細にご関心をお持ちの読者は、直接各組織のウェブサイトをご覧いただきたい★3。そのなかでも注目しておきたいのは、結論部でのAIR助成事業の評価の困難さについての指摘だ。彼女によれば、AIRの評価で難しいのはその「影響力(impact)」と影響が顕在化する「時間差(time lag)」の問題なのだという。このセッションは「事業評価」を主旨としたものではないけれども、今回のレズ・アルティス全体を貫くテーマのひとつだったこともあり、後述したい。

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アーティスト・イン・レジデンスの現在 14
マイクロ・レジデンスの可能性(レズ・アルティス総会2012東京大会レビュー[1])


鷲田めるろ(金沢21世紀美術館キュレーター/CAAK, Center for Art & Architectureボードメンバー)

2012年10月、東京でレズ・アルティスの総会が行なわれた。レズ・アルティスとは、オランダに本部を置く、世界のアーティスト・イン・レジデンスのネットワークで、2年ごとに世界各地で総会が行なわれている。総会にともない、4日間にわたって、約20のプレゼンテーションやセッションが組まれた。そのなかのひとつ、セッション3「マイクロ・レジデンス、アーティスト経営によるレジデンス」について報告する★1

マイクロ・レジデンスとは?

「マイクロ・レジデンス」という言葉は、このセッションのパネリストの一人、村田達彦の提唱しているもので、まだ一般的に定着しているとは言いがたい。村田によると、この言葉は、2005年に、村田が運営するアーティスト・イン・レジデンス「遊工房アートスペース」(以下、遊工房)に滞在していたアーティストが、遊工房を評した言葉に由来する。その特徴として村田は、予算的にも施設的にも小規模であること、行政のスポンサーシップから独立した、アーティスト・ランあるいは草の根的な運営であること、それゆえに、柔軟な対応が可能で、滞在するアーティストのことを最優先に考え、人間関係を大切にしていること、を挙げている★2。私がボードメンバーの一人である非営利の任意団体CAAK, Center for Art & Architecture, Kanazawaでもアーティスト・イン・レジデンスを行なっており、まさにこのマイクロ・レジデンスに該当する。それゆえ、私は村田の活動に強く共感するのだが、アーティスト・イン・レジデンスの施設というと、国際芸術センター青森・ACACアーカスプロジェクトトーキョーワンダーサイト秋吉台国際芸術村など、まず公立の施設を思い浮かべてしまうのが現状だ。そのようななか、世界中のアーティスト・イン・レジデンスの関係者が集まるレズ・アルティスの総会において、このようなマイクロ・レジデンスをテーマとするセッションが組まれたこと自体を評価したい。
遊工房は、2001年にレズ・アルティスのメンバーに加盟しており、村田は理事を経て、現在は副会長を務めている。遊工房の運営だけではなく、国際的なネットワークの形成にも尽力してきたことが、レズ・アルティスの組織内でも正当に評価されて現在の立場があるのだろう。実際、本セッションの登壇者たちは、村田と関係の深い人たちが大半を占める。村田と、モデレーターの原田真千子以外の6人の登壇者のうち、アナト・リトウィン、フランシスコ・ゲバラ、ジュリー・アップメイヤーの3人は、ちょうどこの時期、遊工房で滞在しているアーティスト兼オーガナイザーたちである。私は参加することはできなかったが、その4日後には、ほぼ同じメンバーで、遊工房に場所を変え、マイクロ・レジデンスに関するトークとディスカッションを開催している★3

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アーティスト・イン・レジデンスの現在 13:マリオ・カロ氏インタビュー


1──レズ・アルティス(Res Artis)の歴史

マリオ・カロ──レズ・アルティスは、1992年にアーティスト・イン・レジデンス(以下、レジデンス)に関係する人々が頻繁に出会える方法を確立する必要があると実感した一握りのレジデンス主催者が集まって開かれた非公式の会合から始まりました。最初は人々がざっくばらんに集まり、彼らが中心となって2年ごとに会合が開かれることになりました。そして、いまなおこの当初の目的がレズ・アルティスの主たる存在理由となっています。
すなわち、レジデンス主催者やレジデンスに関心のあるアートの専門家が集い、レジデンスの現場における緊急の課題に対応するための話し合いの機会を提供することなどを目的としています。当時、もっとも差し迫った課題は、世界中でレジデンスが急増し、それにともなう問題に対応するために互いにいかに連携するかということでした。
レズ・アルティスの基本的な活動は専ら、文化交流、アーティストの流動性をうながすことを目指していますが、レズ・アルティスのおもな関心事であり焦点となるのは、レジデンス会員のニーズに応えることです。プログラム活動を通して、私たちはレジデンス・プログラムの主催者が文化的先入観に疑問を投げかけ、世界観を広げるためのクリエイティブなモデルを開発するために不可欠な場を提供しています。

────世界全体で会員は何名いらっしゃるのでしょうか。

カロ──世界全体の会員数を合計すると600名くらいです。私がレズ・アルティスに参加したときには300名を少し超えている程度でした。現在の法人会員数は合計で85です。この間にかなりの発展を遂げたことになりますが、その理由は二つあると私たちは考えています。
ひとつは、組織としての認知度が以前に比べてはるかに高くなったことです。そして、認知度の向上にともない、会員数が増えてきました。しかし、レジデンス活動そのものがかなり発展してきていることも会員数が増えた要因になっていると思います。2009年には韓国で地域会議を開催し、アジア全体とその特有のニーズにも目を向け始めました。レズ・アルティスの会員は現在、日本に8団体、韓国に9団体、中国に12団体となります。

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